家族葬も個々の価値観に基づいた一つのお葬式形式

インドのガンジス川に行くと、川岸では大量の遺体が焼かれ、川の中に遺灰が次々に流されています。衝撃的な光景ですが、これは信仰に基づく行為であり、そうしたお葬式もあるのだと受け入れるのは当然です。最近、日本では多くの人々が参集して故人の冥福を祈る伝統的な大規模お葬式とは異なる、少人数による家族葬が広まってきています。その背景にあるのは、日本が世界でもまれな超高齢化社会になっていること、都市部と地方との二極分化に歯止めがかからないこと、日本経済の失速が生み出した経済格差の拡大という3つの重たいテーマです。

厚生労働省がまとめた2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳で世界2位で、男性も81.09歳です。長寿はおめでたいことですが、社会とのつながりという観点からは、リタイアしたり隠居生活が極めて長くなることで外部との接点が失われていきます。天寿を全うした方のお葬式ともなると、昔の知人や関係者を探し出してお葬式の案内を出すこと自体が困難です。子供が地方の実家を離れて都市部に移り住み、家族がばらばらになっている状態も普遍化しており、親のお葬式になった場合、中心となって動くべき子供たちは親の生前の交友情報を持たないため連絡が難しいという局面は珍しくありません。

また大規模なお葬式にはそれなりの費用がかかります。非正規労働者など経済的に厳しい立場の人にとっては大きな負担です。こうした社会構造、経済構造の変動が家族葬という新しい形を生み出した背景にあります。お葬式は宗教観や死生観、経済的理由などで千差万別になるのは当然であり、多様な価値観の社会を作っていく上で受け入れていくべき事です。