家族葬は歴史と共に変化するお葬式の一形態

家族葬は歴史と共に変化するお葬式の一形態

人類にとって死はさまざまな感情や哲学を生み出します。それがお葬式という形の多様化にも現れています。イラクにある洞窟内には約6万年前のネアンデルタール人の骨と花粉が発見されています。遺体に花を供えたと思われ歴史上初めてのお葬式の跡とする説があります。現在では世界中にさまざまなお葬式の様式があります。現在の日本は火葬ですが昔は土葬でした。現在でも土葬の国は世界中にありますし、鳥に遺体を処理させる鳥葬や、水中に沈める水葬などさまざまな様式があります。これはいろいろな民族が長い歴史の中で精神文化を発達させ、死生観や宗教観が多様化する中で変化を繰り返していったものですから、お葬式のスタイルは民族や地域の歴史を投影したものともいえます。どれが正統で、どれが異端ということはありえず、いろいろな国、いろいろな民族のお葬式のスタイルや考え方を理解し尊重する姿勢が重要です。

最近の日本には伝統的なお葬式は依然として存在していますが、ごく身近な近親者だけで執り行う家族葬が増えてきています。お葬式に対する人々の考え方がさらに多様化してきたもので、一つの歴史上の変化といえます。なぜ家族葬が増えてきたのかという背景を社会構造や経済構造の変化という面から考察し、家族葬のメリットと留意点について考えます。

まず社会構造の変化は国民の年齢構成が示す日本の高齢化にあります。長寿社会には明と暗があり、これがお葬式という儀式に影響を与えています。昔はリタイア後そう長くない年数を経て寿命がきたので故人と会社の元同僚や個人的な付き合いがあった方々との縁は切れていないことが多く、古い知人が会葬に訪れる流れがありました。しかし世界でも例のない超高齢化社会となった今、平均寿命前後で亡くなった場合は会社との縁も切れていることが多く、かつての知人とも連絡の取りようがないということは珍しくありません。かつては新聞に死亡記事を告知するケースも多かったのですが、新聞を購読しない人が増えた現代では効果が薄くなりました。また個人情報という観点からも難しい社会構造となっています。必然的に、連絡が取れる近しい親族だけでの家族葬が手際よくリーズナブルな選択肢として脚光を浴びる条件が整ったという背景があります。さらに核家族化現象によって、父母、子供、孫がばらばらに暮らすという世帯構造が常態化したことで、かつてのように地域ぐるみでのお葬式を執り行うのは現実的ではないケースが増えています。

経済構造の変化も家族葬にしたいという事情を生み出しています。伝統的な盛大なお葬式をしようとするならば相当な費用がかかります。現実的に払えないという場合は割安で済む家族葬を選択せざるを得なくなりますし、仮に経済的に問題はなくても、盛大なお葬式に価値を求めない遺族や、あるいは経済的負担をかけたくないという故人の遺志で家族葬にする場合もあります。

こうしたことを背景に認知されてきた家族葬ですが、評価できる点と、気を付けなければいけない点があります。評価できる点は、遺族が他人に気を遣うことなく心ゆくまで故人と最後の別れができることや、費用が少なくて済むことです。気を付けるべき点は、お葬式に呼ばない親族に納得してもらえるように配慮することと、近所の会葬者への的確な応対です。こうしたことは喪主だけではこなしきれないことも多いので親族が力を合わせることが大切になります。

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2018年11月09日
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